2台の平行設置プロジェクタによる構造化ライトフィールド
近年,ゲーム,医療機器,ロボットビジョン,自動車などさまざまな分野で画像や映像から距離情報を高速で求めることへの期待が高まっている.しかし,例えばKinect Azure(2019,Microsoft)ようにTOFセンサを用いたデバイスがあるが,フレームレートは30fpsであるように市販のTOF用撮像素子では高速な計測が出来ない.またアクティブステレオ法を用いたREALSENSE D435(2018,INTEL)は最大90fpsと対応点探索の処理が重いため高速化が難しい.
そこで,当研究室は三次元計測の高速化を目標として,構造化ライトフィールド照明法を提案している.構造化ライトフィールド照明とは光源からの距離に対応して投影パターンが変化する物を提案手法では利用する.投影パターンを見れば対象までの距離を高速に計測可能な手法となっている.
これまで構造化ライトフィールド照明は,異なるフォーカス位置の複数のプロジェクタから異なるパターンを対象物に同時に投影することで生成していたが,この手法では小領域で前後したときに変化する画像情報量が開口径に依存しているため,平面推定の標準偏差は良くて10mmと高い精度を得ることができなかった(図1).離れた場所の物体に対して数mmの精度で距離情報を得ることが出来れば製品の検査などに用いることが出来る。
そこで構造化ライトフィールドを2台の平行設置プロジェクタで生成することで高速かつ高精度な距離画像推定手法を可能にした.この手法は位相をずらした正弦波状の縞を特定の場所で縦縞と横縞に重なりあうよう位相を調整して画像を作成し投影するもので,2m先の平面推定でRMSEは2.4から8.2mmという高精度な距離情報を投影可能である.また精度と推定可能範囲はトレードオフの関係となっており,用途によって使い分けることが可能である.
この高速かつ高精度に距離を推定する手法をインターフェイスに活用した例として,垂直に張られた布を後ろから指で押したときの頂点にレーザーを当てる動的プロジェクションマッピングを行った動画を以下に示す.
動画 1msで布の形状を三次元推定し,布の頂点にレーザーを当てることが可能.
押した量によってレーザーが描く四角の大きさが変わる.奥行き数十mmで投影した縞模様が縦縞から横縞に変化する.
図1 平行設置プロジェクタの利点
図2 2台の平行設置プロジェクタによる構造化ライトフィールド
参考文献
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木島広夢,奥寛雅 : 2台の平行設置プロジェクタによる高精度かつ1msでの高速な3次元距離画像計測手法,第36回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2018) (中部大学春日井キャンパス, 愛知県春日井市, 2018.9.7)/予稿集,3J3-05
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木島広夢,小原彬寛,奥寛雅 : 2台の平行設置プロジェクタによる高精度かつ高速な3次元距離画像計測手法,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 (Robomech 2018) (北九州国際コンベンションゾーン,2018.6.5)/講演論文集,2A1-I18