HoverCanvas
近年,ドローンショーのように空中に映像を表示する技術が注目を集めており,様々な研究が盛んにおこなわれている.しかし,このような技術を活用するには莫大なコストがかかってしまうという問題点がある.当研究室では,この課題に対し,単体のドローンが吊り下げたスクリーンに地上から映像を投影することで,比較的低コストに空中ディスプレイを実現する技術を開発している.しかし,従来の方法では,使えるプロジェクターの種類がレーザープロジェクターに限られており,比較的単純な図形しか表示できないという問題があった.
そこで当研究室では,新しい空中ディスプレイシステムであるHoverCanvasを提案している.これは,遠方にある対象に対して高速視線制御を可能にする「望遠三枚鏡視線制御システム」,遠方にある対象に対して高輝度で高精細な投影を行うことのできる「望遠レンズ付き高輝度プロジェクター」を組み合わせることで,100m先にある遠方対象に対して動的プロジェクションマッピングを可能にして空中ディスプレイを実現するシステムである.
投影対象として球形バルーンをスクリーンとしてドローンに吊り下げている.スクリーンの両極には視線制御を行う際の目印として赤外光LEDを取り付け,その中心点を「望遠三枚鏡視線制御システム」で追跡している.これにより,スクリーンの視認が困難な夜間においても安定した追跡が可能となる.図1にHoverCanvas試作システムの外観写真,図2にシステムの概要図を示す.
この提案手法の有効性を検証するため,ドローンで吊るした直径2.3mの大型スクリーンに対し,100m離れた地上から動的プロジェクションマッピングを行う野外実験を実施した.その実験の結果を動画に示す.これより,移動するスクリーンに対して安定した投影が維持されることを確認し,本手法により大規模な空中ディスプレイが実現できることを示した.
動画 提案システムにより浮遊する球形スクリーンにアニメーションを投影した様子とシステムが動作する様子

図1 提案システムの外観

図2 システムの概要図
参考文献
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山本真平,廣橋惟冬,奥寛雅 : HoverCanvas:100m 長距離動的投影とドローンによる空中ディスプレイ,ロボティクス・メカトロニクス講演会2025 (ROBOMECH2025)(山形ビッグウイング/やまぎん県民ホール, 山形, 2025.6.6)/予稿集,2A1-S09
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Yuito Hirohashi, Hiromasa Oku: Aerial display method using a flying screen and long range dynamic projection mapping, IEEE Access, vol.13, 62893-62902 (2025) [doi:10.1109/ACCESS.2025.3557000]
